一時期バンドを組んでいたけれども大学卒業以来1度も会っていない知人から急にラインが来た
文章を書いたのでブログに載せてほしいという依頼であった
どういう心情で寄稿しようと思ったのかわからないけれども、寄稿大歓迎なので載せます
寄稿していただいたらなにかしらのコメントをつけてブログにアップさせていただきます
仕事で病んだあなたへ
心が痛くなったことがある
比喩的な表現ではなく、物理的に心が痛くなった
心に形はないが、確かにズキズキと傷んでいた
学生時代に失恋した時だった授業終わりに定食屋でハンバーグカレーを食べていたとき
飲食店のアルバイトで皿洗いをしているとき
電車に乗っているとき、スーパーで買い物しているとき
意識が内に向かうと必ず、心が痛くなって、涙が出たこんなことじゃ生きてるだけで苦しいと思ったので、読書に没頭することで、意識を本の内容に向けることにした
特に、星野源が書いた本を読み耽っていた
その中で印象的だったのが、星野源が闘病中に病の痛みに耐えるため、徹底的にエロいことを考えたという内容だった試しに私もエロいことを考えてみたが、どうしても最終的に、失恋した彼との恋愛にいきついてしまい、余計苦しくなったのでやめた
だけど、このエロい妄想が役立つ日がきた
仕事で病んだ時だ
正確には適応障害になり(同時期に深田恭子も患った!)休職していた時期である
その頃は基本的に体調が悪く、一日中ベッドで寝転がっていた
仕事のことを考えないよう、今度はドラマを見漁っただけど寝る前、寝落ちる前はただ目を瞑るだけの無の時間がある
これがとても苦しかったそんな時に星野源のエロい妄想の話を思い出した。
ダメ元でネクストトライ、試してみることにした
すると今度は効果的面で、エロいことを考えていると仕事のことを一切思い出さず、気づいたら眠りについていた
今、仕事で病んでいるあなたに伝えたい
病んだ時は、その原因となった環境や出来事からまず離れなさいと言われるが
意識や思考は、なかなか仕事から離れてくれないだろうそんな時エロいことを考えてみてほしい
仕事について考えてしまう無限の思考地獄から救ってくれるのは
ただ一つ、エロであるこの長い導入を経て伝えたかったことは
エロ ヘルプ ユー
エロ イズ メディスン
レッツ シンク エロ以上。
感想
自身の苦しんだ経験、そしてそれを取り除くことができたという経験を広く世に広めようという、素晴らしい文章である
自らが得た気付きを周囲にも伝えるというのは帰属意識、ひいては国家意識の表れであり、いまのところ日本はきちんと運営されているのだと安心させられる
さて文中で彼女は「エロ」に対する態度に変化が生じている
①失恋後、エロいことを考えようとするも元カレのことがよぎり辛い気分になる
②しかし、その後彼女はエロによって救われている
ここでなにが起こったかというとおそらく”エロと個人的文脈の切り離し”ではないかと思われる
自分も高校時代に1つ上の彼女がいた
寝起きだけはプロレスラーの高山善廣みたいな顔をしていたが、可愛い子だった
俺は彼女の受験期を精一杯支えた
なけなしの金で焼き肉をおごった ケーキをあげた 裁縫セットを買ってお守りを作った
そして俺の受験期
立命館の入試を終えてお疲れ会をしてあげるという彼女は開口一番に
「あたい、遊んでる男いるのよねん」
それでもなんとか相次ぐ試験を耐え、最終日となる同志社での試験を終えてそのまま彼女の家に行き、そこで安堵からか恨みからかソファでウンコを漏らした
「彼氏がウチでクソ漏らした」との彼女のツイートは70ふぁぼぐらいを記録していた
その後自分が大学に入学して3ヶ月くらいで別れたが、それでも彼女のことが好きだったので失意の日々を過ごしていた
エロいことを考えても辛くなるというのはまさにこのときの懐かしい記憶であり、共感を覚える
そして寄稿文と同じく、自分もその後徐々にエロへの耐性というか、辛さがなくなっていく感覚があった
これはつまり、エロ=元カノという文脈からの脱却である
もう少し考えてみる
エロを個人的文脈から切り離すということはどのような意味を持つのか
まず想像されるのは、個人的文脈から切り離されたエロは、より卑近で低俗なものへと成り下がるのではないかということである
「愛」だなんて尊いものはそこに無いのではないか、とも言いたくなる
しかし、エロの神秘的なところは、このように個人的文脈から切り離され、より卑近なエロを追求した結果、より高尚な領域へ近付くということである
高尚な領域とは、そう、「宇宙」である
小松左京「人類裁判」では、ある日突然宇宙から宇宙代表の裁判官がやってきて、人類に対し、地球上の生物および他の星の生命体への暴虐を断罪する
人類によって虐げられた動物や先住民族、宇宙人などが証言台に立ち、いよいよ人類全体が死刑判決を受けて滅ぼされようとしているとき、バクテリア代表がこのように弁護するのである
「私は、嫌気性バクテリアです。地球のもっとも古い生命の一種です。私たちの種はすでに数十億年の歴史を経ております。現在では、地表にすめず、大地の底や、湖底に住んでいます。しかし、かつては、原子地球上のいたる所にすみ、当時はメタンとアンモニアしかなかった大気の中で、せっせとふえ、大気組成をつくりかえました。私たちのつくりかえた大気と私たちの末裔の中から、ありとあらゆる地球の生命の歴史が生まれました。生命はついに、人類という最高等生物をー宇宙へ出ていく生物を生みだしました。彼らは地球上の他の生命に対して、実にありとあらゆるひどいことをしました。地上のいかなる生物よりつよい力をつかって、勝手放題なことをしました。ーにもかかわらず、彼らは、この星の長い歴史がうみ出した、地球生物の中のチャンピオンであり、私たち、地球上の全生命体の希望でもあるのです・・・。彼らがいかに他の生命体に対して暴虐でも、私たちは、一方では、彼らをより遠く、より高く発展させるために、いかなる犠牲も甘んじてうけるつもりでした。私たちは、彼らに絶滅させられても、よかったのです。彼らがそこのとを通じて、精神的にも、文明的にも、より高くなっていくならば・・・。地球上ではそれでもよかった。しかし、彼らは、太陽系の外で、大変な罪をおかしてしまった。このことは、もはや、弁解の余地はありません。ですが、地球上でもっとも古い生命体、彼らのもっとも古い先祖として、地球上の全生命を代表しておねがいします。どうか彼らに、慈悲をもって、何かのチャンスをあたえてやってください。彼らの暴虐の面だけをもって、その一切の可能性をうばい、私たちの希望の一切をうばわないようにおねがいします。そのひきかえには、人類以外の、地球上の全生命体は、あなたの手によって滅亡させられてもかまわない。どうか、判決にあたって彼らの上に一菊の慈悲をたまわらんことを・・・」
この感動的な弁護は改めて人類の特殊性を感じさせてくれる
そう、人類は地球上で最も高度な生命体なのである
つまり宇宙の発展のためには、なんとしてでも人類を存続させ、より高度な次元へと進まなくてはいけないのである
これは傲慢な考えでもなんでもない
むしろ、上記のことをきちんと自覚することにより、地球の他の生命にとっての素晴らしい未来も切り拓かれる
エロが卑近であればあるほど、それは個人的属性から切り離され、地球の広大な大地と一体化する
大地に根付いたエロは野性的であり、動物的な循環メカニズムに組み込まれる
そして、人類の動物的本能である「知への探求」への旅が始まるのである
それはもちろん自分だけの問題ではなく、数十年数百年いやもっと先へと受け継がれるものである
受け継がれた先では人類はテレパシーのようなものを習得しているのかもしれないし、想像もつかない姿となっているのかもしれない
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最後に記されている「エロ ヘルプ ユー」
ここで救われるのはあなた自身であり、またあなたの背後にゆらゆらと揺れる潜在的な未来なのである
「あなた」という表現を使わず「you」としているのは、”あなただけでない”という意味合いがあるのだと考えられる
卑近なエロを考えるとき、そこに潜む宇宙も想像してほしい
エロから得られる安心感はそういうところにヒントがあるのかもしれない