なおやんの 手記手記 しゅっき〜

なおやんの 手記手記 しゅっき~

痛みに耐えて よく頑張った

ブログタイトル

Peach航空 搭乗マニュアル Part1

プロローグ

お盆は母方の実家で過ごすのが慣習となっていたから、当時小学校6年生の自分もいつもと変わらず夏休みを徳島の祖父母とその近くに住む2つ年上のいとこの「けんちゃん」と共に過ごしていた

 

 

大塚愛を観に行こう」

 

日差しが降り注ぎすぎで外どころか部屋からも出たくない最悪の真夏日にふとけんちゃんが提案する 大塚製薬が主催の無料で観覧できる野外フェスが徳島で開催されるそうで、それに行こうと誘ってきたのであった

さすがにちょっと見てみたい 大塚愛は本当に実在するのか 東京という土地が生み出した虚像じゃないのか 好奇心からコソっと覗いてみることにした

 

コソっと覗く程度の人間なのでもちろんロクに場所取りなどもしておらず、会場に着いた段階で超満員 最低賃金が625円(※2007年当時)の徳島の人間が無料野外フェスなんて見逃すはずがなかった

「どうしょう けんちゃん これ全然見えんよ」

「任しとき」

そう言ってけんちゃんは携帯電話を取り出した 当時中2だったけんちゃんは立派にも携帯電話を持っていた

そして携帯電話を耳にあてる けんちゃんもしかして会場に関係者でもおるん?そんなことある?でもけんちゃんなら可能性はある 長男だった僕にとってけんちゃんは”憧れのお兄ちゃん”であったのだ

 

「んあー?どこらへん??もっと前!?待ってな今向かっとるけんな!待ってな!!んあー」

そう言ってけんちゃんは僕の手を引っ張りステージ方面へ人を掻き分けグングン突き進む 携帯の画面は真っ暗であった 会場の前の方に親がいるという設定の小芝居をしていた 実の兄でなくて良かったと思った

 

しかしそんな汚い小芝居をしてくれたおかげで今大塚愛が目の前にいる 本当にいた 彼女は実在した けんちゃんありがとう

 

「あ!最初に言うときますけどね!大塚製薬やから大塚愛が呼ばれたんちゃいますよ??笑笑笑笑笑」

彼女の第一声に対し僕の周りで地鳴りが起きる 爆笑の渦に包まれているのだ え?そんなおもろい?と思って周りを見渡すと、明らかに大塚愛の上級顧客ばかりであった ファンは推しのボケに対して過剰にウケる これは2020年現在の日本でも改善されていない 推しにスベらせてはいけない そんな日本人の細かな心配りというものが生んだ悲しき慣習である

 

そんな大ウケギャグを早々かましてからの1曲目が「PEACH」であった

正直 かっこよかった

サビの”ピーチ”以外の歌詞何一つ聞き取れないしマジで何言ってるんかわからんけど オーラがあった

 

1曲目が終わり

「いやほんま暑いよねえ今日 いやぁ ほんまに暑い」

 

2曲目が終わり

「暑いなぁ みんな大丈夫?いやぁ ほんまに暑い」

 

3曲目が終わり

「んあー あっつい ほんまに」

 

彼女は何故か毎曲終わるごとにマイクに口を持っていき、いかにこの場の気温がヤバいかを訴え次の曲へと移るのであった 大塚製薬のジュースを売るためそういう契約でも結んでいたのだろうか 荒々しいサブリミナル効果であった

そうなると気付いてしまうが、大塚製薬大塚愛をかけたネタは彼女にとって渾身の出来栄えであったのだ  その後のMCは見るも無惨であった PK戦の1人目にエースを持ってきたものの2人目以降は女児であった 

 

 

"・・・フガ~フガ~ PEACH!! フガフガフガ・・・・"

今でも真夏の太陽に晒されて不快な気分になりそうなときは、Spotify大塚愛PEACHを探し、不明瞭な歌詞を聴きつつぼんやりとした気分になり、つぶやきます

「ほんまに暑い いやぁ 暑いなぁ」

彼女は語彙力を得ることの大切さと同時に、失うことの大切さも説いてくれたような そんな気がするのです