なおやんの 手記手記 しゅっき〜

なおやんの 手記手記 しゅっき~

痛みに耐えて よく頑張った

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今さらオーボエリードの話

コロナ禍から抜け出せない日々が続く

 

どうしましょう リードを買いに行けない これじゃまともに楽器が吹けないわ

そんなオーボエ奏者に朗報だ!!

 

あのウィンズスコアが満を持してオーボエリードの通販を開始!

 


ウィンズスコアより【リード販売始めました】

 

この気色の悪い映像美!ウィンズスコアは本気である!

これで外出による感染リスクを抑えつつオーボエリードを手に入れることが可能となった

 

 

 

 

いや、可能とはなっていないのである

 

オーボエ奏者にとってのオーボエリードとは

例えるならば陸上競技者にとってのシューズのようなものだろうか

ラソン選手、またマラソンが趣味の人間がシューズを通販で買うだろうか いや買うはずがない ショップに足を運び、実物を足にはめてから購入へと至るのではないだろうか

なぜならばそこには善し悪しの絶対的な尺度が存在せず、その価値は本人の「感覚」に強く依存するからである

オーボエリードも然り、本人のダイナミクスの付け方、ピッチのクセ、音色のこだわり等によって様々な観点から価値が測られてしまう

よってオーボエリードは通販でなど買うことができず、実際に口の中で鳴らしてみないことには購入可否の判断がつかないのである

 

このようにオーボエリードというものは非常に曲者で、扱いにくい

マイナー楽器であるオーボエの、そのまた構成物の1つであるリード

こいつの嫌なところを思いつく限り挙げてみる プレイヤー自体が少なすぎるので、共感を求めるというよりかは、こんな苦しみを味わっていたのだという「主張」をしたいだけである

 

オーボエとの出会い

2つ前の記事で書いたように、中学時代は野球部に所属していたがその圧倒的なセンスのなさに打ちひしがれ、結局卒業までロクに結果を出すことができなかった

そして高校受験、畝傍か高田か迷ったあげく、落ちるのが怖すぎて高田に逃げた(結果的には高田に行ってマジで良かったと思ってる)

 

さあ高校生活 最初の悩みはどの部活に入るかである この選択により学生生活の充実度の大半が決まるといっても過言ではない

ここで意地とかプライドを備え持った人間であればムキになって野球を続けるかもしれない

しかし自分は違った 高校受験でも逃げた男である 負けそうな勝負には挑まないことに決めている

そしてよく考えると自分の下の名前はラテンピアニストの松岡直也を由来としていた

この前テレビで、携帯電話番号の下4桁によって運勢がわかるというのを大真面目にやっていたが、そんな不確定要素の塊ですら運勢に関わってくるなら、名前などという一生つきまとうものが人生に及ぼす影響はあまりにも大きいのではないか

藤川球児命名の瞬間から甲子園で剛速球を投げ込む運命であったはずであり、坂本直哉も例に漏れずその類まれなる音楽センスを世に轟かせる運命であったのだ

 

迷うことなく吹奏楽部へと入部を決めた

 

入るからにはやはり花形楽器を担当したい

自分の中で花形楽器はサックスと決まっていた 吹奏楽に限らず、あらゆる楽器の中でもサックスというのはひときわ輝いているものである

サックスを担当できなかったらどうする などという想定はしていない 名前による運命付けにより音楽の神様が必ず微笑むという確信があったからである

 

そもそも吹奏楽部における担当楽器はどのようにして決まるのか

①まず吹奏楽部の各楽器は学校中の様々な教室を借りて練習しており、新入生はそれぞれの教室を訪ね、担当楽器発表日までに全ての楽器を一通り試奏することとなる

 

②そしてそれぞれの教室において担当楽器の先輩連中は、新入生による試奏を見てその適正を判断する

 

③最後にその適正を元に、各楽器のパートリーダーによる新入生のドラフト会議(基本的には話し合い)が開催される

※部長がヒトラー並に権力を持った場合は開催すらされない

 

 

さあいよいよ自分にもサックス試奏の機会が巡ってきた

自分の目の前で試奏をしている新入生は明らかに上手かった それは先輩連中の反応でもわかった

しかしこれで話は簡単になった あの音と同じ音を出せばいいのである

その音は自分みたいな素人が聴いても明らかに厚みのある音であり、シンセで例えるとノコギリ状の波で構成されていた

つまり音を文字に起こしたときに、濁音がつくような音が出せればベストであり、逆に半濁音のような薄い音は絶対に出してはいけない

人生で聴いてきたあらゆるサックスプレイヤーの顔を思い浮かべる 本田雅人・ケニーG・サンボーン・ジェフカシワ…

口に力を込める 積年の想いは一筋の息となり、才能の花火が打ち上げられた

 

 

ぽぴー

 

 

 

 

 いやいや祖谷渓

オーボエ 坂本直哉」

担当楽器発表の日、部長が楽器名と新入生の名前を読み上げる

サックス担当になれなかった時点でもうなんでも来いという気持ちになっていた はいはいオーボエね がんばんべー *1

 

んん オーボエ

 

軽くパニックになった オーボエなどという楽器は知らない 楽器体験で吹いたはずやけど本当に記憶がない 徳島出身ゆえに祖谷渓大歩危小歩危のことはよく知っているけどオーボエなんて聞いたことがない

学生生活の大半を費やして極める楽器が得体のしれない物であるほど恐ろしいことはない 横山ホットブラザーズのノコギリみたいな楽器かもしれない 3年間「お前はアホか」を奏で続けるのか

 

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ヤマハHPより)

 

実物を見ると案外イケていた オーボエはメカニックである 男はこんなの好きなんでしょ?みたいな見た目をしている

そして音を出して10分後には完全にハマっていた なんて面白い楽器なのか

この面白さを一言で表すならば「自由度」に尽きると思う

世界イチ難しい楽器と言われるほど、音程は安定せず音色はすぐに安っぽくなり、その安定感のなさゆえ強弱の表現もあまりに難しい

しかしそうやって自ら色んな要素をコントロールできるという手間が、高い自由度を生み出しており、その柔軟さに惚れてしまったのである

この自由度の元となるのがリードである

オーボエリードは「シングルリード」と呼ばれる、サックスやクラリネットのリードとは違い、2枚の薄い木によって構成されており「ダブルリード」と呼ばれる

 

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(メルカリ出品商品より)

 

リードを上下から唇で挟み込むため、人のコントロールが広範囲に及び、難易度の高くなる反面、自由な表現が可能となる

 

 

ちなみにこうやって書いているといかにもオーボエをマスターした人間かのようであるが、死ぬほど下手である

そしてオーボエとの闘いが始まった それはすなわち「オーボエリード」との闘いであった

 

割合

入部してすぐは、先輩連中から譲り受けたリードを使用していたが、入部後すぐの定期演奏会が終わったあと、先輩連中に同行し、初めて自分でリードを選んだ

そうして選んだリードを吹いて驚くのであるが、全く違う音が出るのである もしかして先輩連中はロクなリードを自分に渡さなかったのではないか こうしてオーボエにおけるリードへの「依存度」が徐々にわかっていくのである

 

あるとき、ミーティングで使用する大部屋の後ろにある吹奏楽雑誌を読むと、驚くべきことが書いていた

そこには、あるオーボエプロ奏者のインタビューが載っていたのだが、彼はオーボエ演奏を構成する要素として、本人の技術は3割であり残り7割はリードに左右されると言い放っていた

これを読んで救われたのか絶望したのかわからない ただ、ヤバい楽器を担当してしまったと思った

太鼓の達人も初心者のうちはあくまで音楽にリズムをあわせて楽しくやってられるが、ある程度極めると、右から流れる赤丸青丸のみに気を取られ、シューティングゲームをしているかの様態となってしまう

自分もリードに命を捧げるようなことは避けなければならない そう思った瞬間であった

 

以下、具体的にオーボエリードの厄介な点を挙げてみる

 

1.高すぎる

1枚3,000円 最初その価格を知ったときは吹奏楽部を辞めようかと思った

なぜなら、この価格に対しあまりにも早くその寿命を迎えるからである

これらは後で詳しく述べるが、1本のリードを使い続けていると1ヶ月ももたないうちに木が劣化し、音の鳴りが明らかに変わってしまうのである

そして寿命を迎えずとも、1ミリにも満たないヒビが入ると即死する

さらにリードが高い分本体が比較的安価なのかと思えば本体もアホみたいに高い

安い本体を買わせて付属消耗品で稼ぐ、いわゆるストックビジネスですらないのだ

もはやここに価格カルテルが導入されていることは疑いの余地もない

オーボエ奏者は搾取され続けているのである 払わなくてもいい対価を払い、資本家だけが儲かる一方なのである

 

現実的に、牛皮で作られているわけでもないオーボエリードがなぜここまで高価なのか これは作る手間がかかりすぎていることに起因する

 

オーボエ奏者の中には自らリードを作ってしまう人間がいる しかしその制作過程には様々な器具が必要となり、その費用もかさむのと、まともなリードを作れるまでに多大な時間を要する 最初のうちは100本作って1本程度しかまともなリードを作れないらしい この一見さんお断りな感じがシンプルにキショい

 

そんな手間を考えると1枚3,000円という価格にも納得せざるを得ないのかもしれない しかしあまりにも痛い出費である

高校では補助金が出たため1枚700円で買うことができたが、今ではまともに3,000円払っている 高校生の時に1万枚くらい買っとけば良かった しかし高校生にとって700円も大金なのである

 

2.少なすぎる

何がどう少ないのか 市場に出回る数が少なすぎるのである

もちろん手に入らないほど少ないわけではなく、例えばこれが安定して高品質な製品であるとするならば、十分すぎるほどの数は出回っている

しかしオーボエリードとは個人の感覚による好みが非常に大きく、加えて製作者による出来も不安定である

この2つの要素が絡み合うと、実際に使えるようなリードはほんの僅かとなってしまうのである

 

うちの高校のオーボエパートではいつも月に一度決まった販売店へリードを買いに行き、そこでリードの試奏をし、気に入ったものをその場で購入していた

月に1度のこの機会にまともなリードに巡り会えなければ、その後の1ヶ月は地獄を味わうこととなる 2年生の定期演奏会前にタイミング悪くまともなリードがなさすぎて校外学習をサボって買いに行ったことすらある

 

オーボエリードというのは水に十分濡らさなければ音が鳴らないという特殊な設計になっており、その店では水をためた小さなガラスの容器を渡してくれ、その中に自分たちはこれでもかと店のリードを詰め込む

試奏室は10分か15分だかの制限時間が決まってて、この時間に様々なリードを吹き分け、今後の運勢を占う珠玉のリードを選び抜くのである

高校生の男女が同じ水に浸かったリードを吹いては戻し吹いては戻しを繰り返す、ハタから見れば一種のドキドキイベントかもしれない しかしあのときはそれどころじゃなくて本当に生きるか死ぬかの15分であった

ここで難しいのが、どう考えても極上のリードに巡り合ったとき、果たして自分がこれをもらってしまっていいのかということであった

気に入ったリードがあれば即その場で自分のものにしていいという取り決めはパートの中であったが、いざ出会ってしまうと先輩の顔がチラつく

ここは譲るべきではないか いやでも自分の方が技術がないからもらうべきでは いやいやリードはオーボエの7割やぞ おいどうするねん

 

結局自分はそのリードを手放すのであった 自分が最上級学年になり、やっと好き勝手リードを選べると思っても今度は後輩の顔がチラつく そしてやっぱり手にとったその極上のリードを「場」に戻すのであった

 

オーボエ奏者は八方美人であってはいけない

  

3.繊細すぎる

上述したが、オーボエリードはあまりにも壊れやすい

歯に当てて破壊するのは初心者あるあるで、ある程度慣れてきてもふと唇に強く当てすぎて木が0コンマ何ミリめくれるとか、タンギングをしただけで崩壊することもある

しかしやっぱり口の中に置いておくのが1番安全で、響けユーフォニアムでみぞれちゃんが本番前の舞台袖でフルートののぞみちゃんから話しかけれるも、口にリードを咥えたまま放せないので頷くしかできないといったシーンがあったが、まさにあれはオーボエ奏者にとってのリードの大事さを表していて感心してしまった

 

さらに外傷がなくとも吹き続ければすごいスピードで劣化する

寿命は長くて2ヶ月半くらいで、平均すると1ヶ月半までにはアホになる

また逆にカスみたいなリードがある日突然覚醒することも稀にあったりして、これはこれで感動的であるが、こういった不確定要素は無いに限る

 

そしてリードの寿命というものを考えたとき、第一線で活躍するエリートのリードをどこで起用するのかという問題が発生する

もちろん定期演奏会やコンクールを第一に考えてリードを調整していくのだが、客に聞かせる演奏はもちろんそれだけではない

 

例えばクリスマスに近所の幼稚園にて演奏をする機会がある

相手は幼稚園児 まだ小学校にすら通う資格のない猿みたいな連中である

全員で吹き真似をしてYMOの音源を流しても絶対にバレないような相手に対し、第一線のエースを持ってくる必要性などあるだろうか

しかし自分はそこで登板させてしまうのである 子どもは国の宝である 自分は評価されるために音楽をやっているのではない 一人でも多くの人間に音楽の素晴らしさを伝えるためにやっているのではないか?ならばここでもエース級のリードを用いなければ筋が通らないではないか

 

これは老人ホームでの演奏においても当てはまる

高音楽器ゆえ、もはや周波数の関係で老人の耳には届くことすらないのではないか

そうなれば吹き真似も同じである リードそのものを持っていく必要性すら議論の対象となり得る

しかしここでも疲弊しきったエースを帯同させるのである 老人には敬意を払わなくてはいけない 今の大日本を作ったのは目の前の老人連中である 全力で吹かざるを得ないではないか

 

坂本直哉は人口ピラミッドの端くれ相手にも手を抜かなかった これは忘れないで欲しい

 

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※参考 2019・日本の人口ピラミッド

 

 

そんな端くれ相手に使うリードはもちろんその本番に向けた練習段階から使っておく必要があるわけで、この気色の悪い自分のポリシーと八方美人な性格によってリードは次々に野垂れ死んでいくのであった

 

 

指揮をとったのは自分である

 

 

東京裁判A級戦犯と認定され死刑となりました

 

 

 

おわり

 

 

 

 他の部員の楽器論も聞きたいんでまた聞かせてください

こういう主張とオチの弱い記事は書くのしんどいな がんばんべ*2

 

*1:遊助「ミツバチ」より引用(2010年発売・ソニー・ミュージックレコーズ

*2:遊助「ミツバチ」より引用(2010年発売・ソニー・ミュージックレコーズ