なおやんの 手記手記 しゅっき〜

なおやんの 手記手記 しゅっき~

痛みに耐えて よく頑張った

ブログタイトル

裁判傍聴に行った話

したいことリスト

2018の年末かな、年明けを2時間後くらいに控え、急にしたいことリストを作成しようと思い立った

残り2時間で仕上げなければならないので、当然ゴミみたいなクオリティであったが、その中に「裁判傍聴に行く」というのを入れていた

ちなみにしたいことリストの中でも1番したかったことは「野生のシャチを見る」(未だ未達成)

 

そんな2019年したいことリストの1つであった裁判傍聴にやっと行ける機会が訪れた

夏休みが1日余っていたのと、かねてから裁判傍聴に行こうと約束していた友人が同じく休みをとってくれた 裁判は休日には開かれないので、まず休みを取るというのが1つのハードルなのである

 

当日

野球初心者がとりあえず甲子園に連れられるように、裁判初心者も犯罪の聖地「大阪」の裁判所に行くべきだと思い、大阪地裁へ

 

まず建物に入るにあたり、空港みたいに持ち物検査があり、いきなり驚かされる

ベルトコンベアに消えるリュックを見守るといつも得も言われぬ高揚感に包まれる よおし北海道に行くぞ〜〜!って気分になる

 

入ってすぐのところにファイルが置いてあって、フェスみたいに今日のセットリストを見ることができる

どいつが一番フロアを湧かせられるか?の観点で選ぶので室内型のフェスと同じだと思っていい

写真撮影は禁止なので、良さげなのがあればメモメモ

 

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1件目 住居侵入・窃盗罪

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参考画像



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法定はこんな感じで、手前の柵のこちら側が傍聴席になっている

しばらくすると、被告人の男が入ってくる

ジャズ系のライブハウスでよくある、客席を通っての入場(ファンとハイタッチしながら)なんてものはもちろんなく、柵越しに見ることになる

被告人は警察官2人に両脇から連れられ、フラフラと法廷の中心へと歩く

手には物々しい手錠

よくニュース映像で、警察に連行される被告人の手の部分だけモザイクがしていることがあって、なんでそんなことをするのかわからなかったけど、実際目の前で手錠というものを見ると、これが想像以上にショッキングな映像であることがわかる

 

まず被告人が人違いでないことを確認するため、被告人は自ら名前・生年月日・住所を読み上げさせられる

生年月日からこの方は60代であることがわかったが、住所の読み上げで縮み上がった あまりにも実家と近いのである

怪談「メリーさん」を超高速でやられてるような、奈良県!○○郡!!と近付いてくる瞬間的な恐怖にチビりかけた

 

さてここからは検察官が実際の罪名や犯行状況を述べてくれる

・被告人は前科6犯、初犯16歳という経歴を持っている

・停職につかず家もなく、ネットカフェを転々としていた

・ついに金が尽きて宿すら確保できなくなりそうなので、仕方無しに窃盗に入った

流れとしてはこんな感じであったが、次に気になる状況が出てくる

 

被告人は、1階にはおそらく誰もいないだろうが2階には人影が見えている、そんな家に忍び込んだのである

 

なぜ人がいることがわかっている家に忍び込んだのか 当然の疑問が沸く

 

これについては、実際に盗みに入った人間にしかわからないのであろうが、「いつ誰が帰ってくるかわからない状況ほど怖いものはない」と供述したらしい

ホラー映画を見ていて、追われる立場のカメラから、追う立場のカメラに切り替わるとき、無性にホッとすることがある

敵の現在地がわかるというのは、それが近くであり、危険な状況であるにしても「救い」に思えてしまう

結局被告人はドカドカと1階に降りてきた住人と鉢合わせして万事休すとなるが、それでも姿の見えない恐怖に震えるよりかマシだったのかもしれない

 

そして検察官のターンは終わり

 

さあ弁護人のターン

異議ありー!言え!ありー て!湧くどーフロア 言え言え 

 

 

立ち上がりかける中腰くらいで弁護人の口からテナーサックスみたいなふわふわとした音が出る

「全て同意します」

 

こうして、世の中で1番何も起こらない日本語が弁護人の口から飛び出し、裁判は20分ほどであっけなく終わった

次回日程を決めるとき検察官も弁護人も裁判官もみんなメモ帳とかスマホとか取り出して「○日の午後行けます?」とかその場でやり出して、バンド練習の予定決めるとき思い出した 音楽したいなあ

 

2件目 覚せい剤取締法違反

次はうってかわって30代の女性

自分の名前・生年月日・住所の読み上げの段階から非常に歯切れが良く、礼儀正しい方でもあり、薬物なんてやっている風にはみえない

 

彼女も前科持ち 前科3犯 全て覚せい剤

摂取したのは「○○○プロパン」という薬物

検察官がもうこのワードにこなれすぎてスラスラと言うからなんという薬物か全然聞き取れなかった

フェニルアミノプロパンかフェニルメチルアミノプロパンのどちらかのはず

 

「被告人は、場所は不定であるが全国各地で薬物を摂取しており・・・」と、いきなりよくわからない日本語が飛び出す 場所不定の全国ツアーてバンクシーかなんかですか

 

職歴は不明で、家はなく、ホテルを転々としたり野宿をしたりして生活

もうお金も尽きそうなある日、ついに自ら交番に出向き、保護して欲しいと頼む

 

「ここで被告人は警察官に対し『私シャブ打ってます』『じゃあシャブにしよ』などと発言し・・・」

こうして彼女は捕まった

 

検察官が大真面目な顔で、でもちょっと当時の感情を再現するかのように少し軽めな感じで

「じゃあシャブにしよっ」

て言ったときはさすがに笑いかけてしまった

 

じゃ

1. 前の事柄を受けて、あとの事柄が起こることを示す。それならば。じゃあ。「『私は行かない』『じゃ、僕が行こう』」

2. 前の事柄と関係なく言葉を続けたり、話題を変えたりするときに用いる。それでは。じゃあ。「じゃ、失礼します」

 

 

「じゃあ(じゃ)」が持つ2つの意味、1は順接に近い意味、2は転換となり、そのままコトが進んでもシャブ、どこかに逃げようと思ってもシャブという、絶望的な状況を表すのにこれ以上の言葉はないのだと気付かされる

それをもってして、「じゃあ」の持つどこか軽いニュアンスによりそんな鬱蒼とした状況を切り開きたいという想いも伝わる 笑っている場合じゃない この言葉は重たい

 

そして彼女はその当時のことを本当に覚えていなかった

その前後も、つい先週のことすら

ピアノマンくらい記憶がないのに、「何も覚えていないんです!」とやけに歯切れのいい言葉で話すのでそのギャップに混乱しそうになる

 

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ピアノマン

こうして本当に何も覚えていないまま裁判は終わった

その歯切れの良さは本当に記憶がないのか、それとも前科からくる裁判慣れに起因するものか、、、

 

他人事ではない

2つ続けて裁判を見たのでさすがに疲れて外へ出る

大阪地裁の目の前には堂島川が流れており、ここでのんびり過ごすことができる

 

濁った腐り川が俺に問いかける

「本当に他人事だと思ってる?」

くっせえ喋りかけてくんなと思いながらも考える

 

罪を憎んで人を憎まずというが、今日見てきた2人も、色々なものに追い込まれた末、犯行に至ったように思える

もちろん被害者が存在する以上肯定はできないが、生まれ育った家庭環境、周囲の環境、また何か自分の努力でどうしようもない不運なこと等、本人に非はなくとも、堕落をしてしまう可能性は十分に有り得る

例えば中学生のときに、中学生の判断力で、遊び半分でシャブに手を出したら一生を棒に振るなんて可哀想な気もする だって中学生やで

でもそこからは抜け出せないし、本当に一生を棒に振るしかなくなる おそらく今日の彼女も更生できないのだと思う

 

犯行そのものは絶対に否定されるべきであるが、そこに至る過程を聞くと色々と考えさせられる これだけでも裁判傍聴に来る価値はあったと思う

 

コロナ禍で飲食店が潰れそうなとき、信じられないことに「自己責任だ」と叫ぶ人がいた

たまたまその人は頭が優れているから一般企業に入れただけで、この強みを体力に見出すひともいるし、人当たりの良さに見出すひともいる 色々いる

ホワイトワーカー、ブルーワーカーという言葉のせいで、頭脳労働者の方が上のような風潮があるが、決してそんなことはなく、生かす強みが違うだけの話

そう考えると、飲食店が潰れて自己責任なわけがないのである(営業努力を明らかに怠ったとかそんなんではないとすれば)

ちょっとした人生のさじ加減で人生は180度違う方向へ行くのであり、苦境に立たされている人間を、自分とは全くの別次元の人間だと切り捨てるのは想像力が欠落しているのではないか

裁判傍聴により、この世知辛い世の中を改めて見つめ直せたような気がした

 

 

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とかいう、そんな話を 裁判を見終えたあと一杯飲みながらするのもオツ

 

 

「じゃあつぶ貝にしよ」と言える幸運な人生に 感謝しながら

 

 

 

 

 

 

※以下 参考資料

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