なおやんの 手記手記 しゅっき〜

なおやんの 手記手記 しゅっき~

痛みに耐えて よく頑張った

ブログタイトル

物件選びは 難しい

プロローグ

「地獄を見た」

 

その領域に足を踏み入れたものは皆、口を揃えてそう表現する

 

そして俺は、その地獄に対して非常に主体的な関わりを持っていた

地獄と形容されるそれが、本当に地獄であるならば、俺は閻魔大王であろうか

 

その地獄とは、俺が大学4年間を過ごした 下宿部屋であった

 

 

欠点を挙げればキリがないけれども、まずなんせ狭かった

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間取りのこの黒い部分には謎の機材が入っているらしく、収納スペースとしては使えない

この謎スペースのせいで部屋は直角定規のような形状になり、逆に丹下健三が設計したような意匠が垣間見えてオツといえばオツではあった

 

洗濯機は共同 たまにパンツが盗まれることもあれば、逆に洗濯機から回収した洗濯物に上の階の80いくつのお婆ちゃんのパンツが紛れることもあった

 

下鴨本通に面していたから車はビュンビュンやかましく、隣はパブで夜中まで人間が吠えててこれも耳障りこの上なかった

 

 

当時いた彼女をこの部屋に招いたことがある 交際をしているので当然の行為であると思われる

ドアを開けて部屋を認識させた瞬間、井上尚弥のボディを食らったような「うっ」というくぐもった声が彼女から漏れたが、聞こえないふりをした

それでも健気に、手料理を振る舞ってくれると言ってくれた

しかし、キッチンが狭すぎるので、まな板すら買っておらず、当然包丁もなかった

なので、上の階の30代くらいの男の部屋に出向き、初対面ながらも包丁を貸してくれと頼みにいった

断られた

京都は厭な街だと思った

仕方なくハサミでニンジンを切る彼女 

しかし野菜の芯は強いもので、全然切れない

しまいに泣き出す彼女

人生経験の乏しさ故、涙に至る要素が全く理解できず、「手のこのへんに力を入れれば切れやすいのでは?」と力学の視点からアドバイスを与える俺

 

ーー地獄 地獄であった

 

高品質な物事に対する形容は多様性に富んだものである 語彙力が試される

しかし、その真逆の物事へ対する表現は”地獄”で統一されるのかもしれない

 

いざ物件探し

そんな大学以来にひとり暮らしをしたいと思うようになった

理由は単純で、職場と家が遠すぎる

よく、通勤時間を活用して〇〇!とかあるけども、自分は電車で何かができるタイプじゃないというのがこの1年でよくわかった

同じ本を読むにしても、電車で読むのと、もっと静かな空間で読むのとで、理解力や読むスピードが同じなわけがない

電車でできることはもちろんあるが、少々金を出してひとり暮らしをすれば、その行為のクオリティを高めることが可能である

 

そんなわけで物件探し

でもどうやって探そう?

まず物件を探すにあたり、下図のように「部屋設備」と「立地」のバランスをみてどのエリアのものを探すかという方向性を決めなくてはいけない

それを決めたのちに、具体的なエリア選択、そしてエリア内物件の部屋設備比較 とこういった手順でやろうと決めていた

 

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まず立地は、職場が中崎町ということもあり、中崎町・梅田・中津の梅田エリアが第一希望、そして好きな街ということもあり谷六が第二候補、それ以下に南方やら塚本やらの梅田から電車で10分以内エリア、とりあえずこのへんにしておこうと思っていた

部屋設備は特にこだわりはないものの、とりあえず地獄が狭すぎたのでリビングが8畳くらいあってあとはセパレート、都市ガス、二口コンロ、南向き、ゴミ捨て場有り云々、まああればいいかな程度の条件だけをリストアップ

問題は、立地を優先したグリーンゾーンにいくか、部屋設備を優先したオレンジゾーンにいくか である

いや、右上エリアに行けばいいだけでは?と思うかもしれない

 

 

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しかし右上エリアは当然、課金エリアとなっているのである

これは基本給が月収30ウン万とかにならないと開かれないゾーンになっている

そんな時期はいつになるのか そしてそれだけもらえればまた欲が湧き、右上のゾーンというのは新たに発生してくるのだろうなと思う つまり永遠にたどり着けないゾーンであり、実際には存在しないと思うしかない

 


よしとりあえず方向性を決めよう と思うものの、色んな欲が出てきてなんとも方向性が定まらない

そんなわけで、梅田ゾーン、谷六ゾーン、梅田近辺ゾーンをごちゃまぜで探しているうち、その3つの潮流が別々の方向から合わさり、完全に溺れてしまう

懸命に犬かきをしてその場に留まり続けているうち、ついに水平線のかなたに2つの島を発見する

それは、本来は課金が必要と思われる右上ゾーンに属するような、そんな物件2つであった

場所は片方が梅田駅から徒歩10分

もう片方が中崎町駅から徒歩2分

どちらもリビングは8畳以上 家賃の予算にも収まる 文句のつけようがない

すぐさま不動産屋にメールし、入居可能か聞いてみる

両方空いてますよ 来店お願いします とのこと

 

よっしゃ

 

内見当日

発掘物件について

その2つの物件が飛び抜けていたため、もうそこに入居を決めてしまうつもりでいた

しかし内見に行ってみてどうしても気に入らない点があるかもしれないし、念の為に梅田・谷六・梅田近辺で気に入った物件もリストアップし、事前に不動産屋に連絡しておいた 

 

そして内見当日

なぜか友人2人がついてきてくれた 意味わからんけど本当にありがたい

 

不動産屋に着くといきなり内見ではなく、とりあえず希望条件の整理やその他の物件を見せてもらうことに

もうこんな手順ええから早くあの物件が見たいな〜なんて思いつつ渋々用紙に希望条件を書き殴る

 

そしていよいよ俺が発掘した物件へ話が及ぶ

担当の社員の人が、その物件の間取り等の資料を取りに行く間も、友人と「ここでもう決まりじゃない?」みたいな会話をしていた

 

物件の資料を持ってきた、”20代の男前な兄ちゃん” な担当社員の顔はなぜか少し曇っている

「あの、実はですね・・・」

 

おお 来たな 事故物件?

しかしここまでは予想済であった 明らかにお得物件やったし

死亡理由が殺人 ・自死以外であればまあいいかと思えていた それくらいの物件であった

 

「退去の際に莫大な費用がかかるんですよ・・・」

 

?? 予想外

話を聞くと、退去のときにフローリングと壁紙の全張替えが発生するらしい

それは経年劣化も関係なく全て入居者の負担 そして張替えはオーナー指定の業者にしか頼めない

まあそんな細かいことはよくて、肝心の値段はいくらなのか

 

「40〜50万くらいかと・・・」

 

きっしょ殺すぞ

小学校3年生の語彙力で罵倒してやりたくなる でも不動産屋はあくまでオーナーと入居者の仲介なので文句を言っても仕方がない

実際に契約書を見せてもらうと、張替え面積と金額の表があり、キチガイみたいな金額が示されていた ジンバブエドル表記かと思った

 

さらに最悪なことに、2軒とも同じオーナーが所有しているらしい

「それどうにかならないんすか?こんなことは法的には大丈夫なんですか?」などと俺も貧弱な知識と語彙力で食い下がるが、契約書に記されている以上、無理らしい

 

「いやあ、正直なところね、僕だったら絶対ここには入居しないっす!」

担当者が困り顔と笑い顔を混ぜたような絶妙の表情を見せる

 

そうですよね お客様に親身になってくれてるからこそ、自分視点の正直な感想を述べてくれたんですね どうもありがとう

そんな感想がこちらの胸中に発生しているのを確信しているような、そんな余裕も垣間見えたような表情であった

 

しかし、そんなことは1ミリも思っていない

先 言えや

ここでは小学校3年生の語彙力でコトが足りる 先言えや

この物件を決める決めないの1番の争点はどう考えても退去費用に決まっている

それをわかっていながらどうしてメールでのやり取りの時点で伝えないのか

 

そんなこちらの胸中なんのその

「僕だったら!いや正直!おすすめはしませんねえ!僕らもこのオーナーさんには困ってるんすよ!」

いやそんなのは本当にどうでも良くて・・・

事前に伝えていただいていたら、おそらくこの2軒は候補から外していた そして今日はより有意義な議論が出来たであろう

確かにオーナーもヤクザみたいなことしよるなと思うけれども、そこへ向かう怒りはそもそも事前にかなり緩和可能であったわけで

 

その他物件について

仕方がないので、リストアップしてきた物件はどうですかと聞くと、その場で調べて「埋まってますねぇ〜」と言う

これも来店前にリストを送っていたので、その時点で入居者がいるかどうか確認できなかったのだろうか 持ち弾が減ったのがわかっていたならこちらも補充するのに

いやこちらが求めすぎなのか?俺は重たい男なのだろうか わからなくなってきた

店内でいきなり発狂してみようか

担当社員のこの男はどんな顔をするだろうか

 

その他、担当社員が提案してきた梅田エリアの物件はパッとしないものであった

何軒か見せられたけど全然頭に入ってこない

 

「お客さんはわからないと思うんですけど、梅田周辺の相場っていうのは・・・」

 

一度気に入らないことがあると全てが気に入らなくなるように、「お客さんはわからないと思うんですけど」なんていう言葉にも、眉毛が若干痙攣を起こしそうになる

 

イルカショーにおいて、イルカの生態についてトレーナーが

「お客さんはわからないと思うんですけど、イルカの耳は目の後ろ、ここについてるんですね!で、お客さんはわからないと思うんですけど、ロシアはイルカを軍事利用したことがあって・・・」

 

みたいに、「お客さんはわからないと思うんですけど」なんて言葉を枕詞のように連発したら、「そらお前は知ってるわな!!」と言いたくなる 

 

そんなわけで、話が右から左に抜けていく感じなので、特に内見したい物件も見つからなかった

そしてこれは後から気付いたことであるが、このとき提示された物件の中に、結局そのあと別の不動産で入居を決める物件もあったのだ 恐ろしいことである

不動産屋との相性で物件を決める、だなんてクソくらえ 条件が全て だと思っていたけれども、やっぱり相性というか最低限話を聞く気になるかどうかは絶対条件なのかもしれない 頭に入ってくる情報量が変わってくる

 

 

梅田エリアが厳しいことがわかったので、先程の図でいうオレンジゾーン、部屋設備重視に切り替えた方がいいのかな、、、との迷いも急に生じ、一旦出直します!と申し出て今日は退散することに

逐一希望物件言うてもらったら入居可能か教えますんで!って担当社員さんがラインの交換を求めてきたので、まあそれはしてもらおうと思って応じた

 

アイコンを見るとトイプードルを抱いた本人の写真であった

多分これ普段も使うようなプライベートなアカウントやん!と思うと同時に、嘘でもここでシベリアンハスキーの成犬とかを抱いててくれたら信用力も上がるのになと思ってしまう

 

シベリアンハスキーの成犬を抱けているということはシベリアンハスキーに信用されているわけで、すなわち信用できる 

対してトイプードルはそのサイズ故、信用の有無に関わらず、武力により抱きあげることが可能である

これでは犬からの信用度もわからない

 

こんなところに目がいってしまうほど、俺の心は荒んでいた

 

他の不動産屋へ

家に帰って条件をもう一回整理して物件選びをやり直そうと思っていたが、友人たちに「せっかくやし」ともう1軒行こうと薦められる

そんなこんなで2次会みたいな流れでフラっと大手不動産屋へ

 

そこでも梅田近辺で物件ないですか、と探してもらった

これいいじゃーんとなった中崎町の物件があったので、内見に行くことに(前述したようにトイプー男が紹介してくれた物件でもあった)

 

気に入ったので決めました ちょっと狭いけど 問題なし

 

住みたい場所を優先して物件選びをするように最後までサポートしてくれ、2軒目の不動産屋にも行こうと誘ってくれた友人には頭が上がらない

多分1人で不動産屋を巡っていたら心が折れて多分南方か塚本あたりに住んでいたと思う

 

そしてそのへんに住んでいたらおそらく後悔していた

物件を決めてから、決めたからなのか、大阪において中崎町ほど面白い街はないと確信するようになったから

またその理由については書くけど

 

そんなわけで中崎町に住んだので、皆きてね

もう地獄は見させません