なおやんの 手記手記 しゅっき〜

なおやんの 手記手記 しゅっき~

痛みに耐えて よく頑張った

ブログタイトル

美容室でお酒を飲みました

昨日の出来事

 

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そりゃ飲むでしょ

ビール片手にカットしませんか?するでしょ

 

アテは男前になってゆく自分の顔面

酒、美味いに決まってるだぎゃ

 

世の中にはまだまだ既知の事柄・物事同士の組み合わせによるイノベーションが溢れているのだと思わされた

 

大学生のとき所属していた軽音サークルでは、合宿の締めくくりに男だけ全員裸でライブを行うという慣習があり、これが素晴らしかった

あなたは五臓六腑に音が染み渡る感覚というものを味わったことがあるだろうか

エフェクターを踏もうと思って下を見たとき、視界に自らの陰部が映り込んだ経験はあるだろうか

音楽に向き合うものは全員このイベントを経験しておくべきだと思うほどの、忘れがたい経験であった

美容室×ビール

裸×音楽 

のように、まだ発見されていないとんでもない組み合わせがあるはずである

 

 

 

ーーーーー以下創作ーーーーー

 

 

 

「早く持ってこい!」

俺は声を荒げる

 

体内の血はモナコグランプリかのごとく不規則な速度でぐるんぐるんと回転している

 

その血液を盛んに送り出す原動力は目の前に置かれた空のハートランドの瓶であった

4本置かれているが、瓶のすぐ奥に鏡があるため、実質8本のように見える

それもあってか摂取したはずのアルコール以上に酔いがまわっているように感じられる

とにかく俺の目は血走っていた

美容室で酒を飲むという非日常体験に完全におかしくなり、体が異常なまでにアルコールを欲しているらしい

 

とろんとろんと揺れる視線が背後の美容師を鏡越しに捉える

いつの間に来ていたのか

手には瓶 直立不動である

なにをしている 早く瓶を俺の前に置け

鏡越しに美容師を見る

少し美容師の右手が動いたのが見えた

あとは覚えていない

 

ばぎゃーん

 

振り下ろされたビール瓶が俺の後頭部に振り下ろされた

「これが俺なりの散髪じゃえ!!!」

何が起こったのかわからず俺は痛みを感じることさえできない

後頭部にあてた手は真っ赤に染まり、指には数秒前までもりもりと生えていた頭髪たちが絡みつく

 

さすがに犯罪である

ビール瓶で後輩を殴った力士が立件されたニュースを見たような気がする

しかしあまりの出来事に言葉が出てこない

 

「後ろ、こんな感じなってまーす」

背後から声をかけられる

恐ろしさのあまり振り返ることもできず前の鏡越しに確認する

そこには美容師が手にした横長の鏡によって、血まみれの後頭部が鮮明に映し出されていた

ここにきてまだなお散髪という行為の本筋に戻ろうとしているのか

「あ、いいですねー」

ついつい反射で口から出てしまう

「てめえ、いつもそうやって適当に返事してんのか!」

ぽこー

また後頭部へ瓶が振り下ろされ、アルコールによって巡り巡っている血液は容赦なくそこから飛び出す

 

そしてまた手持ち鏡にて、より一層凄惨を極めた後頭部が映し出される

「あ、いいですねー」

長年の慣習は簡単には抜けない

 

「てめえ」

ぽこー

 

「あ、いいですねー」

「てめえ」

ぽこー

「あ、いいですねー」

「てめえ」

ぽこー

「あ、いいですねー」

「てめえ」

ぽこー

 

 

 

 

「そんなことがあり、この名前にしたんです」

オーナーである俺はにっこりと微笑みながら、晴れて本日オープンしたイタリア料理店の真っ赤な看板を指差す

 

”poco a poco”

 

「モッツァレラな前途を祝して 乾杯」

俺の手にはハートランドの瓶が握られていた